IT資産より組織的資産の方が重要です。なぜなら、組織的資産に投資することなくIT資産にだけ投資してもそのIT資産はほとんど無駄になるからです。IT投資をする前に、組織的資産に投資をするべきで、組織的資産はIT資産より重要です。
前回の投稿の最後に
- 経営に必要な資源は明らかに「ヒト」であり、経営者もわかっている
- しかし、日本企業は「ヒト」には投資しない。
- その理由は「ヒト」という資産は見えにくい資産だからです。
というまとめをしました。
で、本当に経営に必要な資源は「ヒト」なのか?という話があります。
そんな証拠あるの?
本当に経営に必要な資源は「ヒト」なのか?
前回投稿にもあったように、ヒトが経営の他の資源に影響を与えているので、論理的には、ヒトが一番大切なのです。
でも、そんな証拠はあるのか?
インタンジブルアセットという話
まずは、マサチューセッツ工科大学スローンスクールのエリック・ブリニョルフソン教授が書いた「インタンジブル・アセット」という書籍に書かれていることを紹介します。
ちなみに、インタンジブル・アセット(Intangible Asset)というのは、無形の資産という意味で、反対語のタンジブル・アセット(Tangible Asset)というのは、有形の資産という意味です。
遡ること、1987年。
ノーベル経済学賞受賞者でマサチューセッツ工科大学のロバート・ソロー教授は、1987年にニューヨークタイムズ紙の記事で「コンピュータの時代は至る所に見えるが、生産性統計には表れていない」と述べました。

要するに、
企業はIT投資してるけどITが生産性向上に寄与してないのでは?
と言っちゃったわけです。
これは、「ソローパラドックス」と言われています。
この意見にはみんなビックリしてしまい、様々な議論を生んだのですが、その時代には
- まだまだ効果が出るにはIT投資が少ないんだよーという意見
- ITって言ったってソローの調査方法ってITを正しく捉えてないんじゃないの?という意見
- IT化の効果が現われるまでにはもう少し時間かかるってーという意見
とういう当時の意見があり、(ITベンダーの意見か?)
あまり解決しなかったけど、それはそれでなんとなく、IT投資は基本的に必要でしょってことで話は収まったわけです。
で、ロバート・ソローがいた大学と同じマサチューセッツ工科大学のエリック・ブリニョルフソン教授は、

いやいや、IT投資って生産性向上に寄与してるって
という調査結果を発表しました。

IT資本と生産性の関係
IT投資の量を横軸にして、縦軸に生産性を取った時に、正の相関があったのです。※調査期間は1990年前後
ほら、見たことか! ちゃんとIT投資をしていれば生産性は向上するんだ!
と言うのかと思いきや、エリック・ブリニョルフソン教授は、まあそれはそうだろうけど・・・・。

- なんで、IT投資を相対的に他社より多いのに、生産性が低い企業があるんだ?
- なんで、IT投資を相対的に他社より少ないのに、生産性が高い企業があるんだ?
と言う疑問を持ったのでした。
で、突き止めたのが、
IT投資をして得たIT資本という見える資産(タンジブル・アセット)も大事だろうけど、IT投資ではない組織的投資をして得た組織的資産のような見えない資産(インタンジブル・アセット)の方が重要だよ!
ってことでした。
組織的資産ってのは、
- 業務プロセス
- 改善する姿勢
- 人材育成
- 組織文化
- モチベーション
- 権限委譲
- 組織構造
というような資産です。
エリック・ブリニョルフソン教授は、
・純粋なIT資産は10%程度
・ITを支える補完的な資産は15%
・組織的資産は75%
と言う割合にしていることが生産性を向上させるポイントだ
と言っています。

そして、
企業価値が高い企業は、純粋なIT資産であるコンピュータのハードウエア投資額1ドルに対し、組織的資産への投資額は9ドル
だと言っています。
これは、僕の実体験から見ても合点がいきますね。
同じようなソフトウェアを、同じような業種業態の企業に、同じような企業規模に、同じベンダーがシステム開発をしても、そのプロジェクトが失敗する会社と、成功する会社があるわけです。
それは、つまり、失敗する会社は組織的資産に投資をしていなかったと言うことだったのです。
よく、ERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれる業務ソフトを導入する時に、業務プロセスをリエンジニアリングするなり抜本的な改善をせずに、従来の業務プロセスを維持しつつ、従来の業務プロセスをERPでできるようにカスタマイズするというパターンがあります。
このようなことをしていると、ERP導入という何億円もかかるプロジェクトもほとんど無駄だということです。
たぶん、人工知能などを使ったRPA(Robotic Process Automation)の導入も同じ失敗が起きます。
業務プロセスを見直さずに、RPAだけをいれても、たいして改善されないことになります。
IT投資は無駄!
本当にヒトという資産は大切なのか?という疑問もあると思いますが、少なくとも、ITのようなツールを導入したって、社員のモチベーションや主体性や権限委譲や企業文化が開発されていなければ、概ね無駄です。
IT投資をする前に、組織的資産に投資をするべきだということです。
あと、実は・・・今は、働き方改革でしょ!とか言って
- カフェテリアを作る
- 社員旅行に行く
- テレワークなどで自宅で仕事ができる
- お菓子などがオフィスで自由に食べられる
- 副業を認める
という施策をしても働き方改革にはならない可能性があります
従業員満足度は向上しますが、業績は向上しません。
その理由は・・・・。
それは、またの投稿にします。
今回のポイント
IT資産より組織的資産の方が重要。
IT投資をする前に、組織的資産に投資をするべき。
ここまで読んでくれてサンクイット!!!
サンクイットは、ポストイットからインスパイアされた造語です。ポストイットは「それを貼る」という意味合いなので、サンクイットは「それに感謝する」という意味です。ポストイットのように、相手の心に感謝を貼ろうという意味もあります。